念願のマイホーム購入には、新築と中古、戸建てから集合住宅まで、さまざまな選択肢があります。そのなかで中古マンションは、新築に比べて安価で、新築よりも立地条件のいい物件を選びやすいといったメリットがある、有力な選択肢の一つです。
中古マンションを購入するにあたっては、築年数や建物の修繕状況などのさまざまなチェックポイントがありますが、忘れずにチェックしておきたいのが「アスベストが使われているかどうか」です。
マンションを購入するのではなく賃貸マンションの物件を借りるケースでも、安心して生活するためには、アスベストの使用状況は確認しておきたいチェックポイントといえます。そこで、アスベスト調査を行う必要がある理由とその調査方法、アスベストの使用が判明した場合の対応についてみていきましょう。
目次
昭和63年以降建築の分譲マンションや賃貸物件がおすすめ
最近友人が中古で物件を探しているんですが、なかなか探すのが大変そうです。
今は中古物件が人気のようですね。築年数があまり経過していない中古物件は、建物の傷みも少なく設備も新し目で非常に魅力的です。
築年数がある程度経過している物件でも、安価で購入しやすくて好立地の物件もより選びやすくなるみたいですね。
はい。最近では、リフォーム・リノベーションを施す前提で古めの物件を購入するケースも増えています。古民家カフェなんかも人気ですよね。
賃貸マンションを借りる場合でも、築年数が経っている古めの物件には家賃が安いから借りやすいんですよね。私もちょっと古めの賃貸に住んでいます。
ペットの飼育が可能な物件を探すケースでも、古めの物件のほうが見つかりやすい傾向がありますから、なにかと中古物件はおすすめですね。しかし、そのようなメリットを考慮しながらも、あまり新しくない古めの物件を探そうと考える場合に注意したいのが、アスベストの使用です。
リフォームやリノベーション時に解体するとなったときは注意しないといけないですよね。
そうなんです。日本では1975年(昭和50年)の「特定化学物質等障害予防規則」改正を皮切りにアスベストの使用に規制がかかり、段階的に強いものになっていきました。2006年(平成18年)の「労働安全衛生法施行令」改正によって、アスベストの使用は実質的に全面禁止に至った経緯があります。
2006年以降に建てられたマンションならアスベストの心配はいらないと考えてもいいでしょうか。
そうですね。心配ないといえます。しかし、さまざまな事情から、もう少し築年数の経過している物件を選択肢に入れたいと考えることもあるでしょう。そうしたもろもろのバランスを考えると、1988年(昭和63年)以降に建てられたマンションならアスベストの危険性も避けやすくおすすめです。
アスベスト調査の手順
建築時期はアスベストの使用可能性を推定する一つの目安にすぎないというのはもうご存じですよね。
はい。100%の判断はできないんですよね。
そのとおりです。なので、自分や家族が住むマンションを探すにしても、不動産投資を目的とした物件を探すにしても、中古マンションの購入や借り入れを行うのであれば、アスベストの含有状況を確実に把握するための調査は必ず行っておくべきでしょう。
調査の手順ってどんなふうにすすむんでしょうか?
では、簡単に説明していきましょうか。
重要事項説明書の確認をする
まずは、不動産会社に問い合わせて重要事項説明書を確認し、アスベスト使用の記載がないかどうかを確認します。アスベスト使用の有無が未調査であれば、その旨が記載されています。
きちんと記載されているんですね。
ええ。しかし、調査が実施されている場合でも、対象が共用部分のみで各住戸は調査されていないということもあるので注意しなければいけません。
設計図面・材料表の確認をする
次は、マンションの設計図面や材料表を確認して、「アスベスト」「石綿」といった記載がないかどうかを確認します。
規制前に建てられたマンションなどはとくに注意しないといけませんね。
はい。1988年以前に建てられたマンションの場合は、天井や壁の板材、エレベーターシャフトや機械室の吹き付け材などにアスベストが含まれている可能性が高い傾向があります。
アスベスト成分分析をする
最終的にはアスベスト使用の疑いがある箇所の建材を採取して成分分析を行います。
専門家の出番ですね!
ええ。サンプル採取や分析調査は専門の調査機関に依頼が必要です。調査費用は有料になります。
もしもアスベストの使用が確認されたら……
アスベストは非常に細い天然の鉱物繊維なので一旦空気中に飛び散ると人が吸い込んでしまいやすいんですよね。分解・排出が難しいためそのまま体内に溜まっていくとも聞きました。
そうなんです。それが人体に健康被害をもたらし、肺がんや中皮腫といった深刻な疾患を引き起こすことになるんですね。これが、いわゆるアスベストの健康被害です。
もしも調査の結果、もしアスベストが使われていると判明したらどうしたらいいんでしょうか?そのままにしておけばアスベストの危険を放置することにつながってしまいますよね。
放置は厳禁ですね。アスベストの危険性は、使われているアスベストの状況や飛散のしやすさによって異なりますが、いずれにしても何らかの対策を施す必要が生じると考えるべきでしょう。
分譲マンションを購入する場合
分譲マンションにアスベストが使われていた場合は除去はどうしたらいいんでしょうか?費用面も気になります。
基本的には、アスベストが使われている部分の建材を取り除き、アスベストを除去する必要ですね。たしかに除去には費用がかかりますが、その費用を売り主が負担するか買い主が負担するかは、売買契約の内容や交渉次第ということになります。
なるほど~。うまく交渉しないといけないんですね。
そうですね。事前に詳しく情報を集めておくと安心かもしれません。
たとえばなんですが、天井に使われている板や床のタイルなどにアスベストが含まれているケースでは、壊さない限り飛散することはないように思います。実際はどうなんでしょうか?
天井などは、セメントなどの建材中の基材にアスベストがしっかり固着しているため、そのままのかたちであればアスベストが空気中に飛散することは少ないと考えられますね。
それでも、リフォームやリノベーションを実施する箇所でアスベストの使用が確認された場合などは、アスベストの除去を実施したあとでないと、リフォーム・リノベーションを実施できません。
吹き付け材は老朽化でも飛散しますよね。この場合はどうなんでしょうか。
吹き付け材などのかたちで使われたアスベストは、たしかに老朽化によって非常に飛散しやすくなりますね。アスベストが含まれた建材を完全除去するか、封じ込め・囲い込みなどでアスベストの飛散を防ぐ方法をとらないといけません。
賃貸物件を借りる場合
賃貸物件で工事を行う必要がある場合は、一般的には不動産会社や管理会社などを通じて借り主がオーナーに要請、承諾を得たうえで実施する必要があります。賃貸物件でアスベストの使用が確認された場合の除去工事も同様に、借り主がオーナーに対応を要請することになるでしょう。
対応してくれない場合もあるんでしょうか。
そうですね。オーナー側からすると、アスベストの対応は義務ではありませんから要請しても応じてもらえない可能性があります。賃貸借契約においてオーナーは、アスベストの使用調査を行ったかどうかを告知する義務はありますが、調査実施やアスベスト除去対応などの義務は負っていないのです。
そうなんですね。あとでトラブルになったりしないためにも、こうしたことをふまえて、アスベストの使用状況や使用時の除去対応については賃貸借契約を結ぶ前に十分確認・交渉しておく必要がありそうですね。
おわりに
アスベストが使われたマンションに自分や家族が住めば、長い潜伏期間を経てアスベストの健康被害を受けてしまう可能性がありますよね。アスベストの危険におびえるのはストレスもかかりそうです。
そうですね。また、マンションを購入していた場合には、いずれはその物件を売却したいと思うときがくるかもしれません。そのとき、アスベストが使われている可能性があるとなれば、買い手がなかなかつかないということも十分考えられます。そうなれば、資産運用にも影響するでしょう。
中古マンションの購入や賃貸マンションを借りるためには、そうしたリスクを抱え込むことのないよう、事前に必ずアスベストの調査を行うと安心ですね。
はい。もしアスベストが使われていると判明した場合には、適切な対策をとってアスベストの被害を食い止めることが重要となります。対策には費用がかかりますが、自治体によってはアスベストの調査や除去工事に補助金を助成しているところもあります。困ったときは、お住まいの地域の自治体に相談してみるのも有効でしょう。