よく聞く「石綿」「アスベスト」、知ってるようで実は知らない!?その詳細を徹底解説!

アスベスト博士
素人にはわかりづらいアスベストをやさしく説明してくれる博士。

30秒でわかるまとめ

  • アスベストとは、細かい繊維が連なった天然鉱石の一種であり、過去には建材として使用されていた
  • 発がん性があり、非常に危険な物質であることが判明している
  • 石綿肺という症状によって呼吸障害を引き起こすことも

事あるごとにニュースやインターネットでよく見かける、「アスベスト」「石綿」の文字。

昔建材によく用いられていた健康被害のあるものだ、ということはご存知の方も多いと思うのですが、実際アスベストがどのような物質なのか、どうして健康被害が起こるのか……などをきちんと説明できる方は少ないのではないでしょうか。

ということで今回は、その「アスベスト」や「石綿」の特徴や物性などを解説していきたいと思います。

そもそも「石綿」「アスベスト」とは?

博士!「石綿」「アスベスト」とはいったい何者なんでしょうか?

突然どうしましたか?では今日は石綿とアスベストについてお話しましょうか。

あっ、「石綿」は日本語名で、「アスベスト」はオランダ語由来の名前がそれぞれ定着したものっていうのは知っています。(ということで、以下ではこれらを「アスベスト」という呼称で統一します)。

素晴らしいですね。そのとおりです。アスベストは耐久性や耐熱性などに富み、かつ大量採掘が可能で安価だったんです。このことから、既に20世紀初頭には有害性の報告があったのにも関わらず、1980年代に及ぶまで「奇跡の鉱物」と呼ばれ、建材などへと大変重宝されてきました。

アスベストが「奇跡の鉱物」ですか?!

はい。しかし、国内においても健康被害の報告が次々と上がったことを皮切りとして、アスベストはその呼称を「静かな時限爆弾」へと変えていきました。そして1995年の「労働安全衛生法施行令」成立、2004年の法改正により、アスベストは表舞台より姿を消したんです。

法の成立から改正まで結構長い時間がかかったんですね。

そうですね。そして、アスベストは、主に蛇紋石系と角閃石系の二つへと大別することが出来る、無機繊維状鉱物の一種です。蛇紋石系は世界シェアの9割以上を占めていた「クリソタイル(白石綿)」を含み、角閃石系は吹付石綿として主に用いられた「クロシドライト(青石綿)」「アモサイト(茶石綿)」「トレモライト(透角閃石綿)」などが含まれ、そのどちらにも発がん性が報告されています。

発がん性ですか…。メカニズムについても教えてください。

発がん性に関するメカニズムは後ほどお話することとしましょう。それでは次に、上に記したうち、主なアスベストであるクリソタイル・クロシドライドについて説明します。
クリソタイルとは、代表的な蛇紋石系アスベストであるクリソタイルは、組成式Mg3(Si2O5)(OH)4を持った直径0.02~0.03μmの小繊維からなっています。

ずいぶん小さな繊維なんですね。

この小繊維が寄り集まることで、直径0.1~1μm、長さ数ミリ~数センチの柔らかな繊維束を成すため、「石綿」の名の通り、白い綿のような構造になるんです。また、カナダやロシアなどの鉄・マグネシウムが豊かな鉱脈で主に採掘されるクリソタイルは、比較的発がん性が低く、低曝露下(1繊維/ml以下)の使用では安全に使用できることが科学的に実証されています。

いくら発がん性が低いとはいえ、その条件下で扱うのは難しいってことですね。

はい。クリソタイルは、未だに規制が為されていない国も多く存在するのだとか。ちなみに日本では、2004年に使用が禁止されました。

クロシドライドについても教えてください。

クロシドライドは、組成式Na2(Fe2+3Fe3+2Si8O22(OH)2)を持つクロシドライドは、日本でも比較的よく採掘が可能なリーベック閃鉱石の繊維状鉱石です。クリソタイルよりも断面がより尖った構造をしており、これに起因した発がん性はクリソタイルのおよそ500倍とも。酸化鉄を含んでいるため、緑青色を帯びているのが特徴です。

500倍ですか?!これも規制されているんですよね?

はい。耐酸性があり、かつ高強度である一方で耐熱性には乏しく、この性質を利用して吹付け材や防酸材などとして溶解したクロシドライドが用いられてきました。しかし発がん性が非常に強く、1995年には製造・使用の両方が禁止されました。

アスベストに起因する症状

では続いて、アスベストがどのように体へと影響を及ぼすのか、そのメカニズムを追っていきましょうか。

アスベストが飛散することによって、肺の中に入ってしまうことが原因で健康被害につながるんですよね?

そのとおりです。アスベストが引き起こす主な病気に、肺がんがあることからもよく分かりますね。呼吸とともに肺の中に入ってしまうんです。現在でもどのような機構で悪性腫瘍が発生するのかには一定の議論が持たれていますが、どうやら活性酸素の発生によるDNA破損が原因となって悪性腫瘍は出来ると考えられているようです。

活性酸素の発生ですか…。疲労があるときにも活性酸素って発生するものですよね。

そうですね、ではもう少しく説明しましょうか。アスベストには、体内の活性酸素の一種であるヒドロキシラジカルの発生を触媒する鉄が含まれているんです。細胞内の過酸化水素がアスベスト中の鉄イオンを触媒として、フェントン型ハーバーワイス反応(・O2- + H2O2 → ・OH + OH- + O2)を起こし、発生したヒドロキシラジカルが結果として連鎖的なDNAの破損を引き起こすと報告されているようでした。

博士、そういえば「石綿肺」ってどんな疾患なんでしょうか?名前だけは聞いたことがあったんですが…。

「石綿肺」はアスベストの影響で起きる呼吸障害です。これは石綿繊維による肺組織の損傷によって肺の線維化が進行し、肺胞にてO2-CO2の交換を行えなくなることが原因とされているようです。石綿肺は、累積の石綿ばく露量が25繊維/ml×年以上の場合に観察されることがほとんどのようですね。

今日は、アスベストという物質についてや、健康被害についてよくわかりました。普段、世間一般では何気なく「アスベストは危険だ」などと騒がれていますが、こういった事項をしっかりと抑えて置かない限り本質的な理解は得られないなと思いました。下手な情報に踊らされてしまうことになりますしね。

もちろん、ここで述べたのは全てほんの触りでしかありませんから、せっかくのこの機会に、学生時代の化学の教科書を引っ張り出しながら文献を漁ってみるのも面白いかもしれませんよ。


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