アスベストの除去作業などについて詳しく調べているとき、よく出てくるキーワードの一つに「レベル」というものがあります。しかし、事前知識が無い状態で「レベル」の単語を見つけても、何を指しているのか皆目見当が付きませんよね。
「レベル」は、アスベストに関する法令や除去作業について調べる上で非常に大事なファクターとなっています。ということで今回は、この「レベル」について、その詳細に迫っていきましょう。
「レベル」とは?
今日は、アスベストの話でよく出てくる「レベル」についてお話しましょうか。
「レベル」、たしかによく聞きますね。一言にアスベストと言っても、その種類や使われている場所にはさまざまなものがありますし、用途ひとつとっても、吹付け材、保温材、断熱材、成形板とか……。これだけ多いとレベルわけした方がわかりやすいですよね。
そうですね。こういった、アスベストが含有されたものの数々を全て同列に扱ってしまっては、必ずどこかで問題が生じてしまうのは自明でしょう。そんな事態を解決するべく生み出されたのが「レベル」なんです。
「レベル」が設定されていれば、一般の方にどれだけ危険かを説明するときもわかりやすそうです。アスベストはどういうレベルわけをされているんでしょうか?
アスベストでよく聞く「レベル」とは、発塵性がどれほどかによってアスベスト含有建材を分類したものです。アスベスト含有建材はレベル1(発じん性が著しく高い)~3(発じん性が比較的低い)にそれぞれ分類され、それぞれでかかってくる費用も大きな差が生じるということになります。
レベル3まであるんですね。それぞれの詳細を教えてください!
レベル1のアスベスト含有建材
レベル1に分類されるアスベスト含有建材には、吹付けアスベストなどの吹付け材のみが分類されており、非常に高い発塵性があるとされています。吹付けアスベストは、建造物の梁や柱などの表面へと吹付けてあることが多く、表面へと綿状のアスベストが露出していることが多いのが特徴です。露出が多いため老朽化などによりアスベストが飛散しやすく大変危険です。
解体工事の際には、周辺にも大きな影響が懸念されますね。
そのとおりです。また、レベル1のアスベスト含有建材を処理する際には、高濃度の粉塵に対応した防塵マスクや保護衣が必要です。4種類の書類を各公的機関に提出する義務や作業員への特別教育の必要があるなど、非常に厳しい対策が求められています。
レベル2のアスベスト含有建材
レベル2にはどんな建材があるんですか?
レベル2に分類されるアスベスト含有建材には、主に石綿含有保温材、耐火被覆材、断熱材などが挙げられるでしょう。レベル2のアスベスト含有建材はレベル1ほどでないものの発塵性が高いとされており、こちらも処理には注意が必要です。
レベルが低くなっても危険なのはかわりないんですね。
そうですね。レベルが1ではなくても、危険なことにはかわりありません。レベル2のアスベスト含有建材は、特にボイラや空調ダクトの保温、屋根や煙突の断熱材に用いられていたことが多いようでした。こういった類は表面への露出が少なく、アスベストが使用されていたことも判明しにくいため、ある意味非常に厄介かもしれません。
レベル1よりも厄介じゃないですか!見えない場所にあるってことですもんね。
こういったレベル2のアスベスト含有建材を処理する際には、3種類の書類の作成・提出、防塵マスク・保護衣の着用など、こちらもレベル1ほどではないにしろ、なかなか厳重な対応が求められているようです。
レベル3のアスベスト含有建材
レベル3に分類されるアスベスト含有建材は一般に発塵性が比較的低いとされているもので、アスベストを含んだ成形板やビニル床タイル、屋根材などに用いられていた石綿スレートなどが主な例でしょう。
レベル3でも届出など必要になるんでしょうか?
いえ、これらのアスベスト含有建材を処理する際には、レベル1や2のような書類の届出は必要ありません。ですが、特殊な薬剤を散布し、アスベストが飛散しにくくする湿式処理や、防塵マスクの着用などは必要です。レベル3のアスベスト含有建材はその性質上、かなりの広範囲で用いられてきたため、もしかしたら一番処理する機会の多いアスベストなのかもしれません。
レベル1・2ほど処理は難しくないにしろ、やはり除去に骨が折れることは間違いないですね。
レベルに応じて使うモノのランクも変わる
除去するアスベストのレベルに応じて、防塵マスクや保護衣などに求められる厳密さも変わるんですよね。それぞれどんなものを使うんでしょうか?
例えばレベル1のアスベスト含有建材を処理する場合には、圧縮酸素形循環式呼吸器、プレッシャデマンド形エアラインマスクや一定流量形エアラインマスク、送風機形ホースマスクなどといった、非常に防塵性の高い防護マスクを使用する必要があります。
映画なんかでみるようなゴツいマスクですね!
それに対してレベル3のアスベスト含有建材を処理する際には、粒子捕集効率95.0%以上の取替え式防じんマスクを使用すれば問題ないとされています。レベルによって、厳密さがかなり違ってくることがお分かり頂けるでしょう。
博士、厚生労働省によって公布されている石綿障害予防規則にとても詳しく書かれているようです!
ということで、アスベスト含有建材のレベルによる違いをお話してきましたが、一言でアスベストと言っても、加工方法や使用方法によって有害性や発塵性に大きな差があることがお分かりいただけたことでしょう。
はい。とはいえ、レベルは違えど危険なことにはかわりない、ということもよくわかりました。
もちろん他にも、含まれているアスベストそのものの種類や、建材が製造された際の精密さによってアスベスト含有建材には安全性に大きな差が生まれてきます。解体工事を行う際は決して素人のみで判断しようとせず、専門家の指示を仰ぐようにしましょう。