施工時期だけでは判断できない! 吹付アスベストの種類と歴史について

アスベスト博士
素人にはわかりづらいアスベストをやさしく説明してくれる博士。

30秒でわかるまとめ

建物の解体を考える際は、その建物にアスベストが使われているかどうかを確認する必要がある。その際、建物が建てられた施工時期がアスベスト使用を判別する目安になる。しかし、吹付けアスベストの場合には使用状況と規制との関連が複雑で、施工時期だけで使用の有無を判断するのが特に難しい。竣工年や設計図面などの書類、施工会社への確認などで判断できない場合は、専門の調査機関による分析調査が必要となる。
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もう誰も住まなくなった空き家を解体したい、相続した家を解体して別の活用方法を考えたい……そのように建物の解体を考える際、確認しなければならないのが、「その建物にアスベスト(石綿)が使われているかどうか」という点です。そんなとき、多くの方がまず確認するのが「その建物が建てられた施工時期」でしょう。

確かに、施工時期はアスベスト使用を判別する目安になります。ところが、それだけでは確認できないケースもあるのです。「吹付アスベスト」の形で使われているアスベストについては、そのような傾向が特にあり、確認を難しくさせています。

施工時期だけで吹付アスベストが判断できない理由

博士、今日もアスベストについて教えてください!

勉強熱心ですね。それでは、今日はアスベストの規制のお話からはじめてみましょうか。

たしか…、アスベストの危険性が知られてから規制されるようになったんですよね。

はい。断熱性や耐火性などの高い機能性を備えながら低コストで使うことができたアスベストは、数多くの建築物に使われてきました。しかし、その危険性が知られるようになると、その使用が法的に規制されるようになったんです。

規制されたタイミングっていつ頃なんでしょうか?

最初の規制は1975年(昭和50年)。アスベストの含有率が重量の5%を超える吹付材を使ってアスベストを吹き付ける作業が禁止されたんです。その重量制限も、1995年(平成7年)には5%から1%に改定。最終的に、2006年(平成18年)には、アスベストの含有量が重量の0.1%を超えるすべての製品の製造・輸入・譲渡・提供・使用が禁止されました。

もしかして、アスベストが使われているかわかるって言われているのは、こうした規制と建物の竣工年を照合することで、アスベストが使われていた可能性があるかどうかを推し量ることができるからでしょうか?

正解です。それが建物の施工時期がアスベストの使用有無の目安とされている理由なんですね。しかし、吹付アスベストの場合、前述のように含有量が少なくなったものの使用可能であった時期もあります。加えて、アスベストにはいくつかの種類がありますが、その種類によっても規制時期が異なるといった事情もあります。

なるほど…。そうなると、吹付アスベストの使用については、施工時期だけでその使用の有無を判断するのは難しいですね。

吹付アスベストの種類について

助手さん、アスベストにはレベルがあるのはご存知ですか?

飛散性のレベルのことでしょうか?アスベストが使われていた建材製品を大きく分類すると、「アスベスト含有吹付材(レベル1)」「飛散性のアスベスト含有建材(レベル2)」「非飛散性のアスベスト含有建材(レベル3)」にレベルわけされますよね。

そのとおりです。また、アスベストを含む吹付材も飛散性です。そして、このなかにはさらに数々の種類があるのです。

どんな種類なんでしょうか?

たとえば、アスベストにセメントと水を混ぜて吹き付ける「吹付アスベスト」。これは、断熱・耐火・吸音などの目的で多くの建物に使われていましたが、アスベストが6割から7割程度含まれているものが多く、それらは1975年の規制で使用できなくなりました。
そこで多く使われるようになったのが「吹付ロックウール」ですね。アスベストが天然の鉱物繊維であるのに対して、ロックウール(岩綿)は岩石などを原料とした人工の鉱物繊維です。吹付ロックウールには、乾式・半乾式・湿式があります。

ロックウールは確か構造がアスベストと似ているんでしたね。この他にも種類があるんですか?

はい。そのほかにも、バーミキュライト(ひる石)とアスベストをミックスして吹付た「吹付バーミキュライト(ひる石吹付)」、真珠岩や黒曜石からなる軽量の骨材であるパーライトをアスベストと混ぜて吹付た「パーライト吹付」などもありますよ。

アスベストにはこんなに種類があるんですね。今ではどれも使われていないんですよね。

過去には、こうした製品にアスベストを混ぜて使っていましたが、現在製造されている製品にはアスベストは含まれていません。

吹付アスベストの調査方法とは

先ほどお話したように、吹付アスベストが建物に使われているかどうかの判断は難しいものです。建築物の竣工年や設計図面、建築時の材料表や施工会社への確認などで判断できないようであれば「分析調査」が必要となります。

設計図面や当時の施工会社に連絡がとれなかったときにはどうしたらいいでしょうか?

そうですね。分析調査を行うには、専門知識と能力を有した機関・業者に依頼しなければいけません。どこに依頼すればわからないという場合は、社団法人日本環境測定分析協会や社団法人日本作業環境測定協会などで紹介を受けることができますから、まずは問い合わせてみてください。

問い合わせてみます!分析調査はどんなことをするんですか?

分析調査は、建物で吹付材や保湿剤としてアスベストが使われていた可能性のある場所から材料を採取して分析します。建物の解体や封じ込め工事・囲い込み工事などを実施するための事前調査としてアスベストの含有調査を実施する場合には、アスベストの使用有無だけでなく、その含有率も調べることになります。

アスベストは見た目だけじゃわからないから、なおさら解体前には調査必須ですね。

そのとおりですね。また、この分析調査は、専門的な技術とさまざまな機械で行ううえに目的によっては必要な人員が多くなるケースもあり、費用は決して安くありません。目的や必要な人員によって異なりますが、1検体あたりおよそ数万円から十数万円ほどかかるとされています。

アスベストは昔は広く普及していたんですよね。およそ3,000種もあるって聞きました。

はい。しかも、その8割方は建材製品が占めており、それらすべてを把握するのは困難といわれています。また、アスベストの使用規制と実際の建築作業の関わりも複雑で、建材を用意する時期と竣工時期がずれているケースなども考えられ、そうなると規制年とずれていてもアスベストが使われていた可能性もあるわけです。

とはいえ、建物の竣工年(築年数)や使用建材が書かれた書類は判断の目安にはなりますよね。

そうですね。判断材料になります。こうした材料を可能な限りそろえて、調査会社や解体会社に相談してみるといいでしょう。

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