瓦のアスベスト含有はどう見分ける? 古い瓦にもアスベストが含まれている可能性大!

アスベスト博士
素人にはわかりづらいアスベストをやさしく説明してくれる博士。

30秒でわかるまとめ

以前は広く普及していたアスベストは、屋根のセメント瓦やスレート屋根にも含まれていた。セメント瓦がそのままであればアスベストが飛散することは考えにくいが、解体工事でセメント瓦が割れるようなことがあれば、アスベストが空気中に飛散して健康被害が生じる可能性がある。それを防ぐためには、アスベストの含有状況の調査や、瓦を1枚ずつていねいに取り除くといった対策が必要になる。
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かつては新築だった住宅も、築年数が経過すれば老朽化してきます。立派な瓦が使われた屋根にも傷みが生じ、雨漏りしはじめるようなことがあれば、屋根の葺き替え工事をしようかと考えることも出てくるでしょう。そんなときは、その瓦にアスベスト(石綿)が含まれていないかどうかを必ずチェックしましょう。

セメント瓦とアスベストの関係

アスベストは危険性が知られるまでは普通に使われてきたんですよね。今では使用が全面的に禁止されていますが…。

そうですね。使用箇所も、建物の天井や壁、配管の断熱材や柱への吹き付け材など、多種多様ですし、屋根なんかもその例外ではありませんよ。

屋根にも使われていたんですか?!

はい。ストレート屋根という種類なんですが、今でも人気の屋根材のひとつなんですよ。耐久性や断熱性などを備えていて、高機能でデザイン性にもすぐれているのが人気の理由のようですね。そのスレート屋根にも、アスベストを含む石綿スレートが多く用いられていた時代がありました。

たしか、屋根材にもいくつか種類がありますがほかの種類も使われていたんですか?

ええ。セメント瓦にもアスベストが使われてきました。セメント瓦は、アスベストとセメントを混ぜ合わせて成形している瓦です。アスベストの耐久性や断熱性、防音性などが生かされ、それでいて低価格ということで、日本の高度経済成長期を支えた建材のひとつといっても過言ではありません。

それだけ人気があったセメント瓦ですから、多くの建物に使われていたということですね。

そのとおりです。なので今もそのまま、屋根の上にアスベストを含むセメント瓦が残っているとしてもまったく不思議ではないのです。

セメント瓦屋根の解体時は注意が必要!

セメントとミックスされてしっかり固まっているセメント瓦は、そのままの形を保っていればアスベストが飛散することはほとんどないと考えられます。

その状態であれば、あわててアスベストの健康被害を危惧する必要はありませんね。でも、セメント瓦を塗り替えたい時はどうしたらいいんでしょうか。

その場合は劣化が進んでいる瓦は事前に交換する必要がありますが、塗り替えだけであれば基本的にはアスベストの飛散リスクは低いとみることができます。問題は、セメント瓦が使われた屋根を解体するときです。

解体工事で瓦が割れてしまったらそこからアスベストが空気中に飛び散ってしまいますよね。

はい。それを吸い込んでしまった人に健康被害が生じる危険が及びます。そうならないよう、解体工事を行うにあたっては、事前準備を入念に行ったうえで瓦を1枚ずつていねいに取り除くなど、アスベストの飛散を防止するための対策が必要になります。

アスベスト含有の調査方法3つ

屋根のセメント瓦にアスベストが含まれているかどうかを見た目で判断することはできません。また、「建物の建築時期からアスベスト使用の有無を判断することができる」といわれることがありますが、それはひとつの目安にすぎません。

建築時期だけで100%判定することも困難なんですね。

はい。そこで、2006年以前に建築された建物の屋根を解体する場合には、アスベストが含まれている可能性があると考えて、まずはアスベスト使用の有無を調査することが大切です。それを調べるには、主に3つの方法がありますよ。

調査方法その1:セメント瓦の商品名や品番を調べる

まずは、解体する建物の屋根に使われているセメント瓦の商品名や品番を調べましょう。

どうやって調べるんですか?

建築に使用されたセメント瓦の商品名や品番は、建築当時の設計図面や材料表を見たり、建築を担当した施工会社に問い合わせしたりすることで確認できますよ。瓦の品番は、瓦の裏側に書かれているのを確認することも可能です。

それならすぐにでも確認できますね。

その情報をもとに、セメント瓦を製造したメーカーのWebサイトで検索する、あるいはメーカーに問い合わせるなどしてセメント瓦の成分を調べ、アスベストの含有状況を確認するのです。

調査方法その2:「石綿(アスベスト)含有建材データベースWeb版」で調べる

博士、「石綿(アスベスト)含有建材データベースWeb版」をみつけましたよ!

「石綿(アスベスト)含有建材データベースWeb版」は、国土交通省が公表しているデータベースですね。セメント瓦の商品名や品番をもとにアスベストの含有状況を確認する際には、製造したメーカーに問い合わせるのではなく、ここで調べることができるんです。

なるほど~。気軽に調べられて便利ですね。

このデータベースは、アスベストが含まれた建材を国土交通省がまとめて公開しているものです。セメント瓦の登録はそれほど多くありませんが、セメント瓦の商品名や品番を照合することでアスベストの含有状況が判明することもあるんですよ。

調査方法その3:専門業者にアスベスト調査を依頼する

セメント瓦の商品名や品番を確認することができない場合や、製造メーカーに問い合わせても成分を確認できなかった場合はどうしたらいいですか?

その場合と、国土交通省のデータベースに該当品番が掲載されていなかった場合などは、専門の調査機関に依頼してセメント瓦の成分分析をしてもらうという方法があります。

なるほど~。どんな方法になるんですか?

この方法は、分析調査を依頼するセメント瓦のサンプルを調査機関に送付するか、サンプルの採取も含めて調査機関に依頼するかたちで、調査機関にセメント瓦の成分分析をしてもらうものです。専門の調査機関による成分分析によって、最も確実にアスベストの含有状況を確認することができますが、調査は有料で、アスベストの採取や成分分析を実施できる調査機関は限られているので注意が必要です。

近くに調査機関がない場合もありますよね。

そうですね。可能であれば近隣地域の調査機関に依頼するのがいいですが、近くに調査機関がなければ、社団法人日本環境測定分析協会から紹介を受けるなどして調査機関を探して依頼しましょう。

もしも瓦にアスベストが含まれていたら?

調査の結果、解体する建物の屋根瓦にアスベストが含まれていることがわかったらどうしたらいいですか?

その場合は、建物の解体工事を行う前にアスベストの対策をとらなければなりません。具体的には、事前準備を入念に行ったうえで瓦を1枚ずつていねいに取り除くなどして、アスベストの飛散を防止しながらアスベスト含有建材を除去することになります。

しっかりとした準備が必要そうですね。

ええ。なお、アスベストの危険性を一時的にしのぐ方法としては、既存の屋根の上に新しい屋根をかぶせる「カバー工法(重ね張り)」という工事があります。カバー工法は、アスベストが含まれた屋根瓦に対して作業することがないため、アスベストの飛散を招くこともありません。ただし、屋根が二重になるため重量が増し、耐震性が落ちるといったデメリットが生じます。

ほかにも飛散防止策ってあるんでしょうか。

屋根瓦のアスベストが飛散してしまうのを防止するために、塗装を行うといった方法もありますよ。といっても、建物自体を解体する際には屋根をそのまま残しておくことはできませんから、カバー工法や飛散防止塗装を採用することはできません。

おわりに

セメント瓦にアスベストが含まれているかどうかを専門機関に依頼して調査すると費用はどのくらいかかるんでしょうか。

数万円程度の調査費用がかかりますね。その結果アスベストが含まれていることが判明すれば、屋根の葺き替えや解体などの工事に際しては相応の対応が必要となり、それにも費用が生じることになります。

う~ん、案外高いですね。

ええ。そうした費用負担は、決して軽いものではないでしょう。そこで、なかには「費用が安くおさまること」を謳って、アスベストが含まれる可能性を無視して解体工事や廃材の処分を進めるような悪質な施工会社もあるといいます。しかし、そういう悪質な会社に工事を依頼すれば、工事の依頼主や作業担当者はもちろん、近隣の住宅にまでアスベストの危険が広く及んでしまうことにつながってしまいます。場合によっては法律違反となりかねません。

安ければいいというものじゃないですね…。

そのとおりです。建物の解体工事を安心して安全に実施するためには、アスベストが含まれている可能性に目をつぶることなく、信頼できる施工会社に依頼することが何より大切です。そうして適切に対応することで、初めてアスベストの被害から解放され、安心を得ることができるんですよ。

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