アスベストが規制された1994年以前に建設された建物が次々と老朽化してきている昨今、そういった不動産をお持ちの方には「ウチの建物ってアスベストが使われているのかな?」と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
そんな時、壁や天井を目視で確認するだけでアスベストがあるか否か、判別出来たらどれだけ楽だろうかと思いますよね。
そしてふと、インターネットで様々なサイトを調べてみると、そこには「目視で判別出来る」という声もあれば「絶対に分からない」との声もあり、いったいどっちが本当なのか迷ってします。
ということで今回はそんな皆さんへ、アスベストは見た目で判断出来るのかを博士と助手が解説いたします。
目次
残念ながら見た目では判断が出来ない
博士、アスベストは見た目で判断できるって本当ですか?インターネットで見かけたのですが…。
まず初めに結果をお伝えしましょう。残念ながら、アスベストは見た目のみでの判断は難しいです。しかし、様々な要素から「使われているかもしれない」と予測することは可能ですよ。
どうして見た目で判断するのが難しいんでしょうか?理由を知りたいです。
アスベストはいたるところに
見分けることが難しい理由はいくつかあるんです。まず初めに挙げられるのは、「アスベストが幅広く使われすぎている」ということでしょう。
幅広く・・・というと、アスベストはそのままの形で壁や天井に使われていた以外にも、建材に混ぜ込まれていたり、表面塗装に裏打ちされている、というのは私も聞いたことがありますね。
そうなんです。一見しただけではそこにアスベストがあると気付きにくいのはそのせいなんですね。ある程度古い建造物においては、「綿のような素材の壁が見当たらなかったからアスベストは使われていない!安心!」とはなれないんです。
なるほど、確かにそれじゃ一見しただけでは判断できませんね。
はい。見た目だけで判断できるというのは、あくまで噂に過ぎない、ということです。また、そうしたアスベストを「隠れアスベスト(非飛散性アスベスト)」と言います。このアスベストは処分の流れも少々面倒なんです。
紛らわしい素材ナンバーワン、ロックウール
アスベストと似た建材のひとつにロックウールというものがあり、これもアスベストを目視で判別することを一層難しくしています。
ロックウールって聞いたことがあります。アスベストとは、どんなところが似ているんでしょうか?
ロックウールはそれこそ名前のごとく、アスベストと同様な綿のような構造をしているんです、細かい内部構造もほぼほぼ共通しています。
ということは、つまり、ロックウールとアスベストを見分けるためには顕微鏡レベルでの検査が必要になるということですよね?
そうですね、検査は必須になってしまいます。しかも、ロックウールにはアスベストのような発がん性は無いとされているため、現在でも広くロックウールは使用されています。その影響で、「この物件にはアスベストが含まれているのでは?」などという誤解を生む原因にもなっているのが現状なんです。
ある程度判別を付ける方法
ということで、完全にアスベストの有無を判別することは難しいということがお分かり頂けたと思います。
はい、一見しただけでは完全に判断できないということが良くわかりました。検査は必須になりますね。
…実は、ある程度にはなりますが、アスベストが使われているか否かを予測する方法があるんです。そのメソッドを最後にご紹介しましょう。
メソッド1:ワタが垂れ下がってきている
建材へと含まれているタイプのアスベストは発見も除去もしにくんいですが、吹付材として用いられたアスベストでしたら、表面に露出しているため比較的発見しやすいです。
確かに吹付材だったら目に見えますもんね。これなら私にも見分けがつけられそうです。あれ?そういえば、吹付アスベストは今でも使用されているんですか?
いえ、吹付アスベストは1986年にはILO石綿条約によって禁止指導が開始され、1994年に制定された労働安全衛生法施行令によって、1995年以降は使用も製造も全面的に禁止されました。
へえ~!今は全面的に禁止されているんですね。となると、昔使用したものが残ってるということなんですね。
そうなりますね。ですので、現在吹付アスベストが使われている箇所は、経年劣化によりアスベストのワタ状物体が梁などから垂れ下がっているような状態になっていることも多く、これがアスベストを目視で見分ける方法の大きな一つとなっているんです。
なるほど~!吹付材を目視するときは、ワタ状物体があるかどうかを見ればいいんですね。
メソッド2:化学的性質を用いる
2つ目のメソッドは化学繊維を用いる方法です。アスベストにはロックウールなどの非常に似通った物質が多く存在しています。それらを見分けるために用いることができるのが、なんとどのご家庭の台所にもある調味料なんです。なんの調味料だと思いますか?
調味料で見分けられるんですか?!う~ん、化学的というと酢とか…?
正解です!お酢が使えるんです。お酢は酸性を示すため、酸に弱いロックウールなどの鉱物はお酢に漬けると溶解してしまうんですが、アスベストは酸に強く安定な物質なので、お酢に漬けても溶解せず、ゲル状となって形が残ります。この性質を利用して、アスベストとほかの物質で簡単な区別が付けられるのです。
なんだか学生のときの化学を思い出しますね!誰かに教えてあげようっと。
あまり自分の目を過信してはいけない
ということで、アスベストを見た目で判断する方法について説明してきましたが、簡易的とはいえ、身近なものを使ってアスベストの含有が分かるというのはありがたいことですね。
そうですね!あっ、特に古い不動産のオーナーさんたちにとっては嬉しい情報じゃないですか?
はい。…しかし、最初に大きなウエイトを置いてお話ししたように、アスベストがその建物に含まれているかを素人が判断するのは難しいと言えます。なんと言ったって、プロでさえ見落とししてしまうことがあるほどなんですから…。
あくまで素人ってことは忘れちゃいけないですね。きちんとプロに判断してもらうのが安全ですね。
その通りです。こういった方法が全く使えないとは言いませんが、実際取り壊し工事を行うとなった場合などには、きちんと専門の業者にチェックをお願いし、分析をしてもらうことにしましょう。