アスベストとロックウールの違いとは?発がん性だけじゃないその差を徹底比較!

アスベスト博士
素人にはわかりづらいアスベストをやさしく説明してくれる博士。

30秒でわかるまとめ

  • ロックウールはアスベストと同様に、天然鉱石の一種である
  • ロックウールも耐久性、耐熱性などに富んでおり、かつ発がん性を持たない
  • その性質から、アスベストの代替品として現在よく用いられている
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アスベストについて調べているとき、何かとよく出てくるものの一つにロックウールがあることは皆さんもご存知でしょう。

「岩綿(がんめん)」という日本語名を持つロックウールですから、字面からも石綿(アスベスト)に類似した物質なのだろうという想像は出来ます。が、実際ロックウールがどういったものなのかを論理立てて説明できる人は少ないはず。

ということで、ロックウールとアスベストにはいったいどのような違いがあるのかを、様々な視点からチェックしていきます。

構造面の違い

助手さん、ロックウールとアスベストの違いはご存知ですか?

う~ん。たしか、外見ではほとんど見分けがつかないですが、顕微鏡レベルでその構造を見てみると全く違う見た目をしていますよね。

素晴らしい!正解です。少し詳しく説明していきましょうか。ロックウールは、玄武岩、珪石などの鉱石を電気炉で溶かしたあとに遠心力などで整形を行った人工鉱物繊維です。そのため一本一本の繊維が長く製造されており、繊維の直径も3~5μmと、肉眼での観察が出来るレベルでの構造となっています。

アスベストは天然鉱物繊維ですよね。しかも、一本一本の繊維がかなり微小なものとなっているため、何本か繊維が束にならないと肉眼での観察ができない。

よく勉強されていますね。また、ロックウールの繊維には繊維方向に垂直な分割が発生することは少ないのも特徴です。アスベストの繊維では垂直・水平方向の分割が両方とも発生します。

なるほど、だからロックウール繊維よりもアスベスト繊維のほうが、より微小なものとなる傾向を持つんですね。

病原性の違い

では助手さん、先ほどお話した構造面の違いこそが、発がん性の違いを説明するうえで必要な情報ということには気付きましたか?

はい!ロックウールの場合、繊維が大きいため吸入しても呼吸器系へ侵入することはあまりないということですよね。でもアスベストは、繊維が微小なため、ひとたび吸入してしまうと容易に肺などの呼吸器系へと侵入してしまいます。

そのとおりです。また、ロックウールは酸に弱いため、万が一体内に侵入したとしても比較的短期間で消滅してしまいますが、アスベストは酸への耐性が高いため体内に滞留することがままあり、これが結果としてがんを引き起こしてしまうのです。

アスベストは酸の耐性も高いんですね。

さらに、体内へと滞留したアスベストはがんの他にも、石綿肺、肺悪性中皮腫などといったじん肺と呼ばれる疾患を引き起こします。その点、ロックウールはこういった疾患への心配をしなくて済むため、ロックウールは現在建材などに広く利用されているんです。

機能面の違い

とはいえ、代替に用いたロックウールがアスベストより著しく劣っていてはいけませんよね?

ええ、そのとおりです。では、ロックウールとアスベストにはどのような機能の違いがあるのかを詳しくお話しましょう。アスベストが1980年代までにかけて重宝された理由は、耐久性、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性などの優れた特性があったためでした。

この点、ロックウールではどうなのでしょうか?

耐久性

先ほどお話したように、ロックウールは玄武岩などの鉱石を人工的に加工した無機物です。そのため腐食するような心配はほぼ無く、耐水性にも優れるため、耐久性には非常に富んでいると言えます。

博士!ロックウール工業会という団体の調査結果がありますよ!それによると、なんと20年放置したロックウールでも強度にほぼ差は無く、形状などもほとんど完全なままだったのだとか。

耐熱性

ロックウールは耐熱性にも非常に優れています。同じような用途で用いられることの多いグラスウールは、およそ600℃の温度で燃焼し収縮してしまいますが、ロックウールは700℃もの熱がかかってもほぼ変化を起こしません。また、ガスバーナーで一点に熱をかけ続けても、表面の変色が起こるのみで形状の変化はほぼ生じないという実験結果も出ています。

すごい!ロックウールは国土交通省からも不燃材料としての認定も受けているんですね!

ロックウールと同様に、断熱材としてよく用いられる発泡プラスチックなどが容易に燃え尽きてしまうことを考えると、耐熱性には非常に優れていることがお分かり頂けるでしょう。

耐薬品性

耐薬品性はどうですか?

残念ながら原料である鉱石の性質上、アスベストとは違ってロックウールの酸に対する耐性はかなり低く、弱酸にも容易に溶解してしまうようです。しかし、アルカリに対する耐性は強いため、他の材料と比較すると相当扱いやすいとは言えそうですね。

電気絶縁性

電気工事などを行う際や、電気室などの吸音材・断熱材にもよくロックウールは用いられているって聞いたことがあります。

おっしゃるとおり、アスベストと同様に、ロックウールの電気絶縁性は非常に優れているようですよ。なので、電気工事などにもよくロックウールは用いられているのだとか。

とても扱いやすい素材・ロックウール

ロックウールとアスベストは構造上は似ているけれど、大きな違いもありますね。

はい。こうやって見ていくと、共通点も多い一方で違った点もやはり多いことがお分かり頂けたと思います。ロックウールの他にも、アスベストの代替品と言われる材料は広く存在しています。これらを上手く利用し、建造物に含まれたアスベストを全て置き換えることが最終的な理想形とも言えるかもしれません。

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