アスベスト(石綿)は、安価でありながらさまざまな効果を得ることができることから、かつては建材として重宝されていました。しかし、その危険性が深刻であることが知られ、一時は社会問題になったことも。その危険性とは、どのようなものなのでしょうか。
また、アスベストが今では法的な規制を受けており使われていないと知ると、「それなら問題ないのではないか」と考える方もおられますが、決してそのようなことはありません。建築業や解体業に従事している方でなくても、健康に生活するうえではアスベストの危険性を理解しておく必要があるのです。
アスベストの危険性を再確認しよう
今日は、アスベストの危険性についてお話しましょうか。まず、アスベストについてわかる範囲で教えてもらえますか?
はい!「アスベスト」とは天然の鉱物繊維の一種で、「石綿(せきめん、いしわた)」とも呼ばれています。アスベストは丈夫で変化しづらく、断熱性や耐火性、防音性といったさまざまなものに対する強い耐性を有しています。それでいて安価だったので、アスベストは、建物を建築する際に使う建材や、自動車のブレーキ関連の部品に用いられる摩擦材などの工業製品に多く使われてきました。なかでも多用されてきたのが建材で3,000種類ともいわれるアスベスト製品の8割以上は建材製品とされています。
そのとおりです。では、なぜアスベストは危険だと言われるようになったのでしょうか?
アスベストは、髪の毛の5000分の1ともいわれる非常に細い線維で、空気中に飛散したアスベストを人が吸い込むと簡単に肺の奥にまで侵入できてしまいます!吸い込まれたアスベストは、体内で分解されたり排出されたりすることなく、体のなかにどんどん蓄積されていきます。その結果、アスベストは呼吸困難などの健康被害を引き起こし、さらには肺がんや悪性中皮腫といった非常に重い病気の原因になるといわれています。
よく学んでいますね。こうした健康被害は、アスベストを吸い込んでから長い期間が経過してから出てくるため、気づくのが遅れ、その間にアスベストがどんどん蓄積されてしまうことで、悪化を促してしまうことが少なくないことも特徴です。
アスベストの危険性の見分け方
アスベストの危険性を回避するには、普段過ごしている建物でアスベストを含む建材が使われていないかどうかを見分ける必要がありますが、目安はなにかありますか?
ありますよ。その目安となるのは「建築年数」です。日本におけるアスベストの使用は、1975年、1995年、2004年と段階を踏んで法的に規制され、2006年には全面禁止に至りました。ということは、1975年以前に建てられた建造物ではアスベストが使用されていた可能性が高いといえるんです。
では、2006年以降に建築された建物については、アスベストを含む建材が使われていることはないと考えることができますよね?
ええ。とはいえ建築年数はあくまで目安であり、おおよその推測にすぎません。また、アスベストの危険性の高さは、どのような場所でどのように使用されているかによっても異なります。
アスベストを含む建材の使われ方の一つとして、アスベストとセメントを混ぜて吹き付け施工する「吹き付けアスベスト」がありますが、この施工法で吹き付けられたアスベストは特に飛散しやすいといわれていますよね。
ええ、しかもこのアスベストを確認するのはなかなか難しいのが実状です。また、対策は必須となりますね。
セルフチェックの方法
アスベストの危険性を回避するには、普段過ごしている建物でアスベストを含む建材が使われていないかどうかを見分ける必要がありますが、一般の生活者が確実に把握するのは困難ですよね。
そうですね。一般の方では見分けはこんなんです。また一方で、アスベストに関する危険性についての心配な点があります。
「アスベストの被害をすでに受けているのではないか」とか、「体の調子がよくないのは、アスベストによるものなのではないか」という心配ということでしょうか?
そうですね。この点については、下記のような自覚症状が続いているかどうかが一つの目安になるので、深く心配する前にチェックしてみてください。
・呼吸に関する症状……胸や背中に痛みがある、ちょっと動くだけでもすぐに息が切れる、横になると息をしづらい
・咳や痰に関する症状……出る回数が増えている、痰の色がおかしい
・熱に関する症状……微熱・高熱が続いている
・その他の症状……体重が突然大きく増減した、食欲が減った、手足がむくんだり顔がはれたりする
アスベストの健康被害は短期間では症状が出ないことが多いって聞きました。自覚症状が出る前でも、定期的に検査したほうが安心できますよね。
そうですね。ある程度進行するまでは症状が見られないことも少なくありませんから、気になるようであれば医療機関で相談しましょう。
アスベスト使用の有無や危険性を見分けるための目安はわかりましたが、それで万全のチェックができるということではないんですね。
はい。心配があるようなら、プロの施工会社やアスベストの調査会社に建物の調査を依頼したり、自分の健康を医療機関に相談するのが安心ですよ。
それと、日常生活のなかでアスベストの危険性が格段に高まりやすいのが「建物を解体するとき」です。建物の解体でアスベストが飛散してしまうようなことがあれば、解体施工する担当者はもちろん、建物のオーナーや近隣の住民にも被害が及ぶ懸念があります。
アスベストの除去や解体工事についてはさまざまな法律で厳しいルールが定められていますが、そうした手間や費用を減らそうと思うあまり、安易に事を進めるのは危険です。適切な調査のうえ、対策を進めていきましょう。