アスベスト、というものをご存知の方も多いと思われます。アスベストは1980年代までにかけて非常に多く使用されていた建材で、今に至るまで広く社会問題として取り上げられてきたことは皆さんの記憶に新しいところでしょう。
しかし、アスベストというものが一種類だけではない、というのをご存知でしょうか?アスベストというのは様々な種類の鉱石を総称したもので、その種類ごとに性質や用途も多かれ少なかれ変化していきます。
ということでこちらのページでは、アスベストの基礎知識の1つとして、アスベストの種類についてご説明しましょう。
そもそもアスベストとは?
博士、アスベストって何者なんですか?言葉自体はよく聞くんですが、いまいちよくわからなくて。
アスベストについて勉強するのはとてもいいことですね。それではまず本題に入る前に、アスベストとはいったいなんなのか、基礎的な知識を大まかに復習していきましょうか。
はい!宜しくおねがいします!アスベストとは、石綿とも呼ばれる天然鉱石群の総称ということは知っています。
よくご存知でしたね。アスベストは非常に微小な繊維状の鉱石物をより集めたような構造をしているのが特徴で、その太さはなんと髪の毛の2000~5000分の1ほどなんです。
すごく細い繊維なんですね!肉眼では見えなそう…。
アスベストは酸やアルカリ、熱、摩擦などに強く、丈夫で安価であるという特性を持っているため、過去には「奇跡の鉱物」とまで呼ばれ、建材などへと幅広く用いられてきました。しかし時が経つにつれ、アスベストの微小繊維を吸入してしまうことによる健康被害などが明らかになっていくと、アスベストはその呼び名を「静かなる時限爆弾」へと変えていき、やがて法規制などによってアスベストの使用・製造は禁止されてしまったんです
そういえば、規制の話はなんとなく聞いたことがあるかもしれません。いくか法がありますよね。
はい。ですが、たとえアスベストへの規制を強めたところで、もう既に建築されている建造物からアスベストを取り除くということはそう容易くはありません。結果、現在に至るまでアスベストはところどころに放置され、深刻な健康被害を及ぼしているのが現状なんです。
アスベストの種類について
それではいよいよ、本題であるアスベストの種類について説明していきましょうか。
アスベストに種類なんてあるんですか?!
もちろんありますよ。アスベストには、大別して蛇紋岩系と角閃岩系という二つの種類があり、それぞれにクリソタイル、アモサイト、クロシドライト、アンソフィライト、トレモライト、アクチノライトが分類されています(以下表参照)。
アスベスト | 種類 | 石綿 | 化学組成式 |
---|---|---|---|
蛇紋岩系 serpentines |
クリソタイル(白石綿) chrysotile |
Mg6Si4O10(OH)8 | |
角閃岩系 amphiboles |
アモサイト(茶石綿) amosite |
(Fe,Mg)7Si8O22(OH)2 | |
クロシドライト(青石綿) crocidolite |
Na(Fe,Mg)3Fe2Si8O22(OH,F)2 | ||
アンソフィライト(直閃石綿) anthophyllite |
(Mg,Fe)7Si8O22(OH)2 | ||
トレモライト(透閃石綿) tremolite |
Ca2(Mg,Fe)6Si8O22(OH)2 | ||
アクチノライト(陽起石綿) actinolite |
Ca2(Mg,Fe)6Si8O22(OH)2 |
そして、それぞれの種類に応じて物性が大きく変わってくるのです。例えば蛇紋岩系に分類されるクリソタイルは、他の角閃岩系アスベストに比べて柔軟性が大きく、代わりに耐酸性は少々劣ります。
へえ~!種類によってこんなに機能性がかわるんですね。
また、同じような組成式を持つトレモライトとアクチノライトでも、前者の引っ張り強度は約70000kg/m^2を誇るのに対して、後者のほうはその1000分の1程度しか強度がありません。
これだけ種類によって機能性がかわるってことは、人に対しての危険性だったり、有毒性もかわるってことですよね?
そうですね。たとえば、発がん性などの人体に対する影響もかなり違っています。蛇紋岩系に分類されるクリソタイルは、繊維が柔らかく肺へ与えるダメージが小さいとされているため毒性が弱く、規制が為されるのも比較的遅いタイミングなんですよ。しかしその他の角閃岩系アスベストの繊維は硬いほか細く長いため、肺などの器官へと与えるダメージがかなり大きく、発がん性も非常に大きいと報告されています。
アスベストの規制は種類によってタイミングが異なった
先ほどお話したとおり、アスベストの種類によって規制されたタイミングは異なります。蛇紋岩系アスベストは2006年に、角閃岩系アスベストは1995年に使用や製造が規制されたと覚えておきましょう。
はい!
平成20年までは、建材に使用されていたアスベストはクリソタイル、アモサイト、クロシドライトのみだったとされていました。ですので、アスベストを含むとされた建造物には、これら三種類のみの検査だけをすればOKということになっていました。しかし、平成20年2月6日に発令された基安化発第206003号通達により、それ以前に上記三種類の検査を行っていたとしても、追加で残りのアンソフィライト、トレモライト、アクチノライトの分析調査を行わなければならなくなったんです。
ということは、過去に検査を行ったから大丈夫、と安心することは出来なくなってしまっているということですよね。
そのとおりです。疑いがある建造物については、早急にアスベストの追加検査をする必要があると言えます。
一言でアスベストと言っても、さまざまな種類や規制があるんですね。覚えておけば、いざ検査や工事となったときに役立つかも。
専門家などの意見も仰ぎながら、正しい情報を入手して安全な生活を送れるようにしたいものですね。